小野唯先生にインタビュー


1.多くの楽器の中からviolinを手にされたのは、何歳の頃、どのような経過によりますか?

3歳の頃、母にヴァイオリンやってみる?と聞かれたのがきっかけです。幼少期から身の回りの音やピアノに興味を持っていたようで、ヴァイオリンとピアノを習わせてもらえました。


2.小学、中学生の頃、暇さえあれば弾いているような、violin大好き、violin第一の生活でしたか?そして、どの時点でviolinを生涯のものとされたのですか?

楽器を奏でるのは大好きでしたが練習には苦手意識がありました。
ピアノよりもヴァイオリンに気持ちが傾いたのは小4くらい。私にとってヴァイオリンのほうが様々な表現や音色が出せるようになり、その頃に優先順位も高くなったと思います。音楽に関わっていたくて向き合ってきたら、生涯のものと出来ていた(る)。という感覚です。


3.ロシアを留学先に選ばれた理由は?ロシアの風土、国民性などから得られたものは?ロシアでの留学生活で何かエピソードがありますか?

理由は高2の時に受けたロシア人ヴァイオリニストのレッスンで、そのメソードが自分の身体と感性にしっくり来たからです。ロシア音楽の深みにも触れ、その地を体験してみたいと思いました。

現地の方々は自国の文化や芸術を愛し誇りに思っているので、日常会話にそのような話は出てきますし、BGMや着信メロディーでクラシック音楽を聴く機会はとても多かった。毎日どこかしらでコンサートやバレエも上演されていて、日常の延長として、特別な公演はとっておきのイベントとして、皆心から楽しんでいました。
芸術が生活の一部であり、知らぬ間に教養としても身に付く環境だったと思います。

生活して感じたのは、世の中は人によってコントロールされるのではなく、私たちは生かされているということ。厳しい気候の中での生活は、尊いもの、素晴らしいもの、美しいものへの心の感度を高めてくれました。
ロシアの人たちはすぐに目を輝かせて褒めたり感動を言葉にします。忍耐強くどんな逆境も正面から受け入れようともします。その生き方に触れ、共感できるようになった作品は多いです。


4.小澤征爾音楽塾はどうでしたか?とても興味あります。

参加させていただいた2011年は、小澤さんの手術や震災が重なったために春の公演が延期となり、夏に音楽塾オーケストラとしてサイトウキネンフェスティバルに参加させていただきました。
小澤さんの指揮のもと弾く機会には恵まれなかったのですけれど、同世代の経験豊富な奏者たちと生活と本番とを共に過ごせたのはよい刺激になりましたし、国内の第一線で活躍されている先生方のステージを聴けたりと、とても凝縮された期間でした。留学直前に国内の最高峰といわれる環境を見られたのは幸運でした。


5.このコンチェルトは,北の国の雄大な自然とシーンと厳しい寒さをバックにして躍動感やドラマチックなメロディーに満ちていると思いますが、(間違ってないといいけれど、私はそう感じています)先生のこの曲への思い、一番のお勧めpointはどこですか?

シベリウス特有の透明感のある世界、静けさの中に湧き出てくる情感や躍動感をどのように音に紡げるか、試行錯誤しながら取り組んでいます。
楽譜を読めば読むほど私の知らない世界だと感じますが、その分イメージは広がっていきます。
シベリウスの他作品も聴いてみたいと思っていただけるような演奏にたどり着けたら良いなと思っています。


6.オケの私たちに望まれること、大事にして欲しい点は?

CAGのカラーは好きなので、そのままでいてほしいです!
もし何か付け加えるなら、楽しみながら自発的に演奏すること、そして音楽と皆と共に呼吸をすること、かな。
何かをしながら良い呼吸をするのって難しいけれど、出来たときって滞りがなくなって気持ちが良いし、集中と開放のバランスがとれるなと思います。


7. コンチェルトでは、solistがぐいとオケを引っ張って高みに連れて行ってくれますが、(私たちの技術の問題はありますけれど)その一体感や引っ張っている感覚とはどのようなものでしょうか?

調和したときを例えるなら、森の中で瑞々しい香りや空気に包まれつつ、身体の内からも味わえているような感じ!でしょうか。
それくらい、安心もするしイキイキも出来るんです。だけど、森そのものではない自分の立場の危うさにちょっぴり怖くもなります。調和も破壊もできるような感覚です。


8.violinを練習していくに当たって、大切にすべきことは何でしょう?

等身大の自分を受け入れながら、練習に向き合うことでしょうか。あとは、"五感を研ぎ澄まして"の基礎練習です。
どれも私が意識していることになってしまいますが、基礎練習の大切さは今ではよく分かります。
音楽面では、作品について理解を深めると共に、作品−ヴァイオリン−自分(心技体)のバランス関係をどう繋げ保つかも意識していると思います。
  

  とても深いお話を伺うことができて,本番に向けて楽しみが一層深まりました。どうもありがとうございました。

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